エンゲージメント経営

従業員のエンゲージメント(働きがい)と役員報酬を連動させる動きが広がってきたことが、先週の日経新聞で取り上げられていました。
エンゲージメントは企業業績や離職率に影響を与えることが明らかになっています。政府も人的資本情報の開示指針で開示推奨項目にエンゲージメントを盛り込む等、経営者は従業員の働きがい向上に取り込むことが、ほぼ義務であるといっても過言ではない状況であると思います。そんな文脈の中で、役員報酬とエンゲージメントを連動させる企業が増えてきているのでしょう。現在は、役員の賞与や株式報酬と連動させている企業が多いようですね。詳細はこちらの記事をご覧ください。

当社のサポートしている会社でも、人事の評価項目の中に「エンゲージメントスコア」を入れている企業はございます。今後、益々、そのような企業は増えていくでしょう。健康診断のように定期的にエンゲージメントスコアを計測し、対策を実施していくことが、当たり前になっていくと思います。
エンゲージメント(働きがい)ウェルビーイング(働く幸せ)ES(従業員満足)など、色々な概念があり混乱されていらっしゃる方も見受けますので、あえて乱暴にまとめさせていただくと、大雑把な方向性は共通しています。重要なことは、お金やお客様のことばかり見ていないで、社員のことを気遣って経営しよう、ということです。それが結果的に、顧客満足や業績向上に繋がるということです。

エンゲージメントやウェルビーイングを計測する方法は、たくさんあります。専門の業者を活用しても良いですし、ストレスチェックの項目を活用しても良いですし、巷に溢れている質問項目等を参考にしながら、自社に適した内容にカスタマイズするのも良いでしょう。大切なことは、はじめの一歩として、まず計測するということです。

なお、エンゲージメントと役員報酬を連動させることについては、否定的な意見もあります。well-being研究で有名な前野隆司教授です。

「従業員の働きがい、エンゲージメントを高めた役員には、役員報酬を出すという、この露骨な方向性、なんだかモヤモヤします(というか、はっきり言うと、残念)。
内発的動機づけ(やる気を出すことなど)は外発的動機づけ(お金や地位)よりも有効であること、非地位財(他人との比較にはよらない財)は地位財(お金や地位)よりも長続きする幸せにつながることが知られています。
よって、役員の方が、熱い思いを持ち、社員に感謝したり、自分の思いや会社のパーパスを真摯に語ったり、心を込めて社員との一体感を醸成したりできるといいですね。
社員から見て、『役員は報酬が欲しいからやってるんでしょ!?』と思われない施策が望ましいと思います。」

前野先生の仰ることは、大変良く理解できます。
ただ、他方で、個人的には、エンゲージメントが報酬に連動していても、していなくても、どちらでもよいとも思っています。
いずれにせよ、エンゲージメントスコアないしウェルビーイングスコアという従業員の気持ちを測る指標が経営上重要な数値であることが認識され、その向上に向けて会社が取り組めば、会社が良くなっていくからです。

なお、日経新聞では、大企業の例が紹介されていますが、以上の話は、大企業に限った話ではございません。人手不足が経営難に直結する中小企業でも、もちろん大切な概念です。まだエンゲージメントやウェルビーイングを計測したことがないという企業様は、まずは一回計測してみることをお勧めします。