理想と現状

本日は、等級制度を構築するに際して、注意しておかなければならない点をお伝えします。

等級制度を作成するに際には、会社が求める人物像を明確にします。
各等級毎に「こんな役割を担い、こんな責任を果たして欲しい。」「こんな行動が出来ていて欲しい」という想いを言語化します。
このように、理想の社員像を明確にするからこそ、社員の皆様が等級制度を見た際に自分の足りない点を把握して成長に繋げたり、自分の将来の理想像を明確にして努力をすることが出来るようになります。

例えば、「自分は3等級で、この等級は『後輩の指導育成』が出来なければいけないけれど、自分は出来ていない。出来るように努力しよう。」を思ったり、「現在は5等級の課長だけど、6等級の部長になるためには、『戦略の立案』や『ビジョンの共有』が要求されるのか。まだ自分には足りないスキルだから、身に付けないといけない。今度、部長に相談して、これからの戦略立案やビジョン共有のサポートをさせてもらおうかな?」など自発的に考え、行動することが可能となります。

このような目的・機能があるため、等級制度を作る際には、現在の社員の実情に合わせて作るのではなく、ある程度ストレッチを効かせて、現状よりも高いレベルを求めることが多いです。
例えば、ある会社では、今までは、年功序列で課長になっている人もいるかもしれませんが、今後はしっかりと課長の役割や責任を定義して、それが出来ない人は課長になれないという制度に改変します。

しかし、ここでよくありがちなのが、等級制度を作成する際に「こんなにレベルの高いことをうちの社員に求めることは出来ない。」「絵に描いた餅となるのでは?」等の意見が、社内から出てくるのです。

いわば、理想(評価制度の人物像)と現実(実際の社員)の間にギャップが生じるということですね。
これは、等級制度構築の際に、良くあるパターンです。

以前、私のクライアントでは、社長が中心となり等級制度を作りましたが、社員様向け説明会の際に会長(前社長)がその制度をご覧になり、「こんなのうちでは無理だ!」と発言されたケースがございます。しかし、実際に等級制度作成を手掛けたのは社長を含め、現場の若手社員であり、現状とはかけ離れていることを百も承知で作っているのです。今までは、残念ながらこんな現状だったけど、今後はこんな社員が集まる会社にしたいという想いを込めているのです。事前に社長と会長が説明会前にすり合わせる時間は当然あったのでしょうが、社長は会長(+会長を取り巻く古参社員)に言っても理解してもらえるとは思えず、これからは自分達が新しい会社を作っていくんだという強い気持ちで、強行突破した事例でした。

社長と会長で意見が分かれる場合もあれば、社長と管理職や幹部との間で意見の対立が生じる場面もあります。大切なのは、「自分はこうしていきたい。こんな会社にしたい。」という明確な意思を持つことですね。
他方で、現状への目配りも重要です。現状とあまりにもかけ離れた人事評価制度では、昇格昇給しずらくなり、社員のモチベーションやエンゲージメントは下がる可能性もあります。

個人的には、「社内でコミュニケーションをしっかりと取り、理想と現状を把握し程よい落としどころを見つける」という方法がお勧めですが、「あるべき姿を堅持し、信念をもって突き進む」(反対を押し切ってでも)というやり方もカッコ良いですね。

評価制度構築&運用方法に正解はございません。
社長が100人いれば、100通りの方法がございます。
当社では、納得のいく評価制度の構築&運用が出来るよう、引き続きサポートして参ります。