「人的資本」の開示
人材の価値である「人的資本」を開示する動きが広がっています。
アメリカの証券取引委員会は2020年から人的資本の開示を義務付けはじめ、日本でも2021年の企業統治方針に「人的資本への投資」を開示すべき」との文言が盛り込まれました。
その流れから、女性管理職、研修体系、従業員エンゲージメント、離職率を開示する企業が増加しています。
経営戦略を最終的に実行するのは、人間です。
ですから、組織が健全な状態で、社員がイキイキと働いているかは、当然ながら業績に影響します。
そのような背景から、投資家に人的資本の情報を公開する流れは、自然なことだと思います。
このようにみると、人的資本に関する情報開示は、上場企業を対象とした、主に投資家向けの施策であるかのように思えるかもしれません。
ですが、中小企業にとっても、人的資本に関する情報開示は、今後必要になってくると思います。
それはなぜか?
既に、求人口コミサイトなどで、社内の情報が公開されているからです。
ご覧になっていただければわかると思いますが、あらゆる情報が口コミサイトに掲載されています。
年収、労働時間などの勤務条件のみならず、仕事のやりがい、社風などの情報も満載です。
現職の社員や退職した社員が書き込んでいるので、赤裸々な記述も多く、求職者が応募する際の貴重な情報源のひとつとなっています。
もう、会社の状況を隠せるような時代は終わったのです。全てガラス張りです。
特に退職者が書いている情報は、ネガティブなものも多数含まれており、しかもそれが具体的な事実をもとに記載さている場合もあり、それが故に説得力があることも多く、情報がどんどんストックされていくので、優秀な人材を採用したい企業の頭を悩ませます。
そのような状況下で、中小企業ができる対策としてあげられるのは、求職者に向けた人的資本の情報開示です。
離職率、エンゲージメント、従業員満足度、well-being(社員幸福度)などを積極的に開示していく企業が、今後、優秀な人材を採用していくでしょう。具体的に、組織を良くするためにどのようなことに取り組んでいるのかもアピールしていくべきです。仕事内容や雇用条件と同じように、求職者に遡及できる情報となります。
たとえ、過去の口コミで悪い評判が書かれていようと、その課題に真正面から取り組み、実際の取り組み内容と現状の従業員満足度などが明らかになっていれば、求職者はその会社のことを信頼するでしょう。
現在の社員のためのエンゲージメント向上や離職率低減のための教育制度、人事制度は、将来の社員のための施策ともなります。4月から新年度の企業様も多いでしょう。ちょうど良い機会ですので、心機一転、さらに一歩前進すべく、組織を良くするための施策に挑戦してみて下さい。