数値評価は有害?

人事評価制度を導入する際に議論となるのが、評価シートの評価項目です。

行動指針、バリュー、成果目標(数値目標)、自己設定目標(真っ新な状態から、
各社員がそれぞれ目標を記入する)、スキルチェックなど、様々なものが評価
項目として考えられます。

制度構築時に、たまに「成果目標(数値目標)」を入れるべきかで、
社内で意見が分かれます。

数値目標導入肯定派の見解としては、数値目標なしでどうして客観的な評価
が出来るのか?目標を数値で管理できなければ、マネジメントしているとは
いえないのでは?などを根拠として挙げることが多いです。

他方で、数値目標導入否定派は、各部門に公平な数値目標を設定出来ない、
管理部門の数値目標が特に難しいなどを理由に挙げる
ことが多いです。

多くの企業では、何らかの形で数値目標を導入します。
個人目標はあえて数値目標に組み込まず、全社共通の項目として、全社の
営業利益率や売上目標達成率を設定することもあります。

他方で、数値目標を導入したいという想いがありながらも、社員の意見を
踏まえ、断腸の思いでそれを断念している会社もあります。

どちらが正解というわけではなく、人事評価制度導入の目的に沿って、会社毎
に導入を検討すれば良い問題ですが、実に悩ましい深い問題でもあります。

これに関連して、研究者の数値評価について、先日、日経新聞にノーベル
化学賞を受賞された野依氏のインタビュー記事が紹介されていましたので、
抜粋しして紹介します。

研究者は、論文数、被引用数などの指標で数値評価されていますが、
野依氏は研究者の数値評価は有害であると指摘しています。

・研究者は創造に向けて知性感性を駆使して歩む。
この精神活動に客観的で定量的な評価はなじまない

・評価は失敗の追及を恐れ、中立で無難なものに逃避し、主観は悪で、客観
は全とする。わかりやすい説明を求め、数字を比較するが、学問が
 わかりやすいはずがない。

・物事の分析に客観的数値を使うのは良いが、評価は価値観を伴う主観

一般の企業には大企業の研究開発部門を除き、研究者が在籍していることは
あまりないと思いますが、程度の差こそあれ、研究者と同じように、
知性や感性が要求される仕事も多くあると思います。
また、仕事の成果がわかりにくい部門や職種もあるでしょう。
さらに、当然のことながら、評価は客観的にできる部分もあれば、人が人を
評価する以上、どうしても主観的な部分は残ります。

だからこそ、一般の企業でも数値目標を入れるかについて、社内で検討
事項になることもあるのです。

正解がない世界ですので(極端な話、人事評価制度が無くても、社員が正当
に評価されていると感じて、社員も会社も成長している会社もありますから)
最後は、どんな会社にしていきたいのか?何に対して給与を払いたいのか?
何を評価したいのか?等を考えながら、社内で議論を重ね、納得のいく結論
を出せば良いと思います。

このように数値目標を評価にいれるかどうかは結局、企業の判断に委ねられ
ますが、いずれにせよ、大切なことがあります。野依氏のコメントをそのまま
引用させて頂きます。

評価は人の一生さえ左右する。だから価に責任があり、慎重で抑制的
でなければならない。」

仰る通りだと思います。
だからこそ、会社は評価項目、基準をしっかりと社員に明示するべきですし、
評価者はしっかりと評価者としてのトレーニングを積んで面談を実施し、
公平で納得感のある評価をくだせるよう努力すべきだと思います。

前述のように、人が人を評価する以上、客観的で絶対に正しい評価をすることは
出来ませんが、やれるだけのことをやることが大切です。