株式報酬~アルムナイ

本日の日経新聞は、人事のトレンドが満載で、人事に関わる人にとっては読み応えのある内容であったと思います。
以下、気になる点についての感想を徒然なるままに記載します。

・最低賃金
2023年度の上げ幅は約30年振りに前年度比4%を超える見込みで、全国平均で1,000円を超える見込みであるとのこと。諸外国と比較すると、日本は賃金が上がっておらず、英仏独は1700円程度、米は2,000円程度、お隣の韓国は1,001円です。構造的な人材不足、生活費高騰などもあり、今後徐々に上がっていくでしょう。
あるお客様は、一般社員の基本給が、最低賃金の増加により上げざるを得ず、社員もモチベーションが上がらないため、人事評価制度を導入されました。どうせ最低賃金アップに伴い、基本給を引き上げていかなければならないのであれば、最低賃金+αを支給し、その部分を本人の業績・行動・取り組み姿勢・スキル向上に向けた取り組みなどにより決定し、やる気を引き上げようという取り組みです。今後、中小企業においても、このような取り組みは必要不可欠になってくるでしょう。そうでなければ、若くてやる気のある優秀な方は入社してくれなくなってしまいますから。
ちなみに、日経新聞では、「日本で働こうとする外国人が減る懸念が大きい」と、日本人だけでなく、外国人ですら働く意欲が減退してしまうことを問題視しています。

・株式報酬
人材確保のために、従業員に株式で報酬を渡す企業が増えているようです。専門人財が不足する中で、エンゲージメント(働きがい)を高めて人材を定着させることが狙いです。国内で500社が導入し、過去5年で約10倍に増えたそうです。ソニーグループは、ゲームや半導体に関わる社員3,000人に平均2,000万円分を付与するようです。優秀な人財確保、経営参画への意識醸成のために、基本給・賞与に上乗せして、株式報酬を導入する企業は、今後も益々増えていくでしょう。
当社のクライアントでも、エンゲージメント向上施策の一環として、従業員持ち株会制度の導入を検討している会社がございます。幸福学経営で有名な伊那食品工業社は、従業員の持ち株比率が創業家を超えているようです。社員の当事者意識、参画意識、自発性を高める有力な手段となります。

・アルムナイ
トヨタ自動車が、キャリア採用の強化を目的として、退職した人が登録できる専門のサイトを立ち上げました。トヨタ自動車のサイトを見ると、下記のような文章が記載されています。

「トヨタ自動車では、当社を退職された方のアルムナイ採用に取り組んでいます。
アルムナイ採用とは、ご自身のキャリアアップ(転職・学業等)のために当社を退職された方や、やむを得ない事情により退職された方が、社外での経験や学びを再びトヨタ自動車で活かしていただくための制度です。
わたしたちは日々変わり続けています。
『モビリティカンパニー』への変革に向けてもう1度トヨタ自動車でご活躍いただける方をお待ちしています。」

トヨタは21年には人事評価制度を改革し成果主義を拡大しました。同年にはリファラル採用(社員紹介による採用)、22年にはダイレクトリクルーティング(企業が求職者に直接アプローチする採用手法)など、少し前まではベンチャー企業が実施していたような評価制度・採用手法をトヨタが取り入れていることが注目に値します。

構造的な人手不足の中で、雇用の流動性が高まっています。企業が成長するためには、優秀な人材を確保し、活躍できる仕組みが必要です。そのために見直すべきは、人事です。
採用、配置・異動、育成、評価、報酬、退職など一連の人事プロセスを改善することをお勧めします。