「はたらきがい」と「はたらく幸せ」

「はたらきがい」「はたらく幸せ」
この両者は何が違うのでしょうか?
私が所属している勉強会で上記がテーマとなりました。

一般の方々からしたら、「『働きがい=働くしあわせ』一緒じゃないか?」と思われるかもしれません。
ですが、このようなテーマが勉強会やディスカッションで取り上げられる背景があるのです。

それは、GPTW社が毎年発表している「働きがいのある会社ランキング」で日本の上位として表彰されている会社の顔ぶれを見ると、社員が幸せそうに働いている会社とは思えない、と感じる人が少なからずいるということです。

リクルートに在籍した際に同僚や先輩がGPTW社の働きがいのある会社ランキングを見た際に、「これってブラック企業ランキングじゃないか?」と笑いながら冗談交じりに会話していたことが思い出されます。彼らは求人業界のプロですから、他の人々よりも様々な企業の情報に精通しています。

私個人としても、「どうしてあの会社がトップランキングに入っているんだろう?」と思うことがしばしばありました。そこで、その勉強会には、GPTW社の社員の方々も参加されるということでしたので、面白そうだと思い、参加したのです。その勉強会では、GPTW社の働きがいの算出方法(詳細は非公開だが公表できる範囲内での情報共有)や座談会などがありましたが、「はたらきがい」と「はたらく幸せ」の違いについての結論は出ませんでした。
しかし、私なりに感じたことがあるので、まとめておきます。

①GPTWの「働きがい」は、外資系企業が点数が高くなる傾向あり?
こちらは、勉強会に参加されている人事やコンサルタントの多くの方々が疑問に持っているようでした。
ランキング上位に、日本の企業が少なすぎる。なぜ、外資系ばかりランキング上位になるのか?
前述のように、GPTWの働きがいのスコアがどのように算出されるのかの詳細はわからないのですが、「日系企業には少なく、外資系企業にはよく見受けられる要素」が点数に影響を与えているのかもしれないと感じました。また、そもそもGPTWは海外の会社なので、外資系企業に人気のあるサーベイなのかもしれません(日本支社と本国とを比較できる等の側面からも使い勝手が良いのかも)。

②どのような状態が「働きがい」があるという状態なのか、人によって全然違う
当然かもしれませんが、GPTWの社員の方々は、あのランキングで表彰されている会社が「働きがい」があると思っているそうです。他方で、あの企業群をみて「ブラック企業ランキング」という方々もいます。働きがいという言葉は抽象的ですが、人によってこれほど認識の違いがある単語も珍しいかもしれません。当たり前ですが、人によって価値観は様々であるため、ある人にとっては働きがいを感じる会社でも、ある人にとってはブラック企業になるということもあり得るということです。

③「GPTWのランキング上位の会社が働きがいで日本のTOPクラス」であると勘違いしてはならない
GPTWの働きがいのある会社ランキングは、日経ビジネスで特集が組まれ、大々的に発表されるため、インパクトが大きく、日経ビジネスの記事をみると、あたかもそのランキング上位の会社が、「働きがい」で「日本トップクラス」であると勘違いしてしまいがちです。ですが、これは誤りです。
前述のように、そもそも、「働きがい」がある状態とは、どういった状態であるのかが、人によってそれぞれ違います。あのランキングは、GPTWの算出基準に基づいて順位付けされたものにすぎません。また、GPTW社の働きがいのある会社ランキングに参加しているのは524社であり、日本に存在する企業367万社のうち僅か0.014%です。

④結局は「どんな会社にしたいのか?」に尽きる
「働きがい」にしても「はたらく幸せ」にしても、人によって感じ方が違います。それゆえ、全員にとって働きがいのある会社、働く幸せを感じる会社を作ることは不可能に近いと思います。
社員を幸せにする経営で有名な、伊那食品工業社は、中長期経営計画や営業目標がなく、営業は売っても売らなくても給料も賞与も一緒です。人事評価制度もなく、全員一律で給与が上がっていきます。離職者は少なく、応募者が殺到する超人気企業です。ですが、それが幸せだと感じる人もいれば、そんな張り合いの感じられない会社にはいられないという人もいるでしょう。
逆に、離職者続出で平均勤続年数は5年にもならないかもしれませんが、在籍期間中に高度なスキルを身に付け、人脈を形成できるような会社は、将来起業したい人やベンチャー企業で活躍したい人にとっては良い環境かもしれませんが、定年までゆっくりと働ける会社を望んでいる人にとっては苦痛でしかないでしょう。

よく人事や経営者の方に「組織診断などの結果を見て、どうすればいいのかアドバイスを欲しい」と言われますが、重要なのは、その組織診断の結果をみて、「御社がどうしたいか?」です。

はたらく幸せややりがいにはたくさんの形があります。
「終身雇用の年功序列がダメ」「残業多い会社やノルマが厳しい会社はダメ」ではなく、
「終身雇用、年功序列でもOK!」「残業多い会社でもノルマが厳しくてもOK!」なのです。
終身雇用や年功序列の会社は社員に「安心感」を、ノルマが厳しい会社は「達成感や成長感」を重視しているともいえます。

自社の経営理念、Purpose、ビジョンに照らし合わせ、どんな人が自社で活躍しそうか?そんな人がイキイキと働くためにどんな環境づくりをすれば良いのか? そんなことを色んな会社が考えながら実践し、それを社外にOPENにしていくことが必要だと思います。そうすることが、求職者に対するメッセージとなりミスマッチのない人材採用に繋がり、また、パフォーマンスを最大限発揮するための組織作りに繋がると思います。