「誰でも歓迎」は誰も来ない ~採用成功を引き寄せる「TMP」とペルソナの力~

経営計画や下期の事業展開に合わせて、来期に向けた「採用活動」を本格化
させている企業様も多いのではないでしょうか。

当社は「人事評価制度・賃金制度のコンサルティング」をコア業務として
おりますが、実は既存のクライアント様から「評価制度だけでなく、
採用もサポートしてもらえませんか?」とお声がけいただき、
採用コンサルティングを担うケースが少なくありません。

制度を作って運用フェーズに入ると、「どんな人材を仲間に迎え、どう評価して
育てていくか」という採用と育成が一気通貫でつながってくるからです。

私自身、キャリアのスタートがリクルートでの中途採用支援や求職者の転職
支援でしたので、いわば採用は長年向き合ってきた得意分野でもあります。

今回は、変化の激しい採用市場において、中小企業が求める人材をしっかりと
採用するための「本質的な考え方」をお話しします。

■ 日進月歩の採用手法と、求人会社の「口車」への注意

ここ数年、特に激変しているのが「採用手法(ツール)」です。

一昔前であれば、リクナビNEXT、マイナビ、dodaなどの大手求人メディアに
広告を載せるか、人材紹介会社(転職エージェント)に依頼するのが定番でした。

しかし現在はどうでしょうか。
Indeedをはじめとする求人検索エンジン、ビズリーチなどのダイレクト
リクルーティング(スカウト型)、社員の紹介によるリファラル採用、
さらにはタイミーなどのスポット採用まで、日々新しいサービスやテクノロジー
が次々と誕生しています。

今は空前の売り手市場(求職者優位)です。
そのため、求人サービスを提供する側の営業担当者も強気で魅力的な提案を
持ってきます。

しかし、メディアやサービスによって費用対効果は全く異なります。
求人広告代理店の営業トークを鵜呑みにして
「言われるがまま高額なプランを契約してしまったが、全く成果が出なかった」
「最初から自社に合ったあのサービスを選んでおけばよかった…」
と後悔する企業様は後を絶ちません。

営業マンの提案に流されることなく、
「本当に自社のターゲットに出会える場なのか」
を冷静に吟味することが何より重要です。

■ 時代が変わっても変わらない「採用の3大課題」

どれほど最新の採用ツールが登場しても、企業が直面する採用課題の本質は昔から変わりません。 ボトルネックは、常に以下の3つに集約されます。

① 集まらない(母集団形成ができない)
② 良い人が来ない(応募はあるが、求めているレベル・人物像と違う)
③ 逃げられる(優秀な人から応募はあるが、選考辞退や内定辞退をされる)

自社が今、この3つのどこで躓いているのかを正しく見極める必要があります。

そして、この課題をクリアするために欠かせないのが、求人業界で古くから
使われている「TMP」というフレームワークです。

・ T(Target):誰に対して(どんな人物に)
・ M(Message):どんなメッセージを(自社のどんな魅力を)
・ P(Process):どんなプロセスで(どのような選考過程で見極め、口説くか)

このTMPを社内で徹底的に研ぎ澄ませることが、採用成功の絶対条件となります。

■ ターゲットを「あえて狭く絞り込む」勇気

TMPを考える上で、今回特に経営者や採用担当者の方にお伝えしたいのが
「ターゲットはあえて絞り込む」ということです。

「少しでも多くの人に応募してほしいから、間口は広げておきたい」

そう思う気持ちはとてもよく分かります。しかし、ターゲットを広げれば広げる
ほど、発信するメッセージは当たり障りのないものになり、結果として誰の
心にも刺さらなくなってしまうのです。

以前、あるクライアント企業様で営業職の採用をご支援した際、あえて
ターゲットを極限まで絞り込んだペルソナ(詳細な人物像)を設定しました。


【ターゲット設定】
・希望勤務地:長野県
・現住所:関東圏、関西圏
・年齢:20代中盤~30代前半
・性別:女性
・最終学歴:大卒、短大卒
・経験職種:接客・販売
・志向性:安定志向 > 挑戦志向

【具体的なペルソナ】
「高校卒業後、大学進学にあたり県外へ転居し、そのまま関東・関西で就職。
数年働いて仕事には慣れたものの、今後のライフプラン(結婚・子育て・
親の介護など)を考え、地元である長野に戻って働きたいと考えている女性」


実際の募集要項としては、「20歳以上であれば男女不問、未経験OK」という
間口の広い営業職でした。 しかし、求人原稿のメッセージや訴求内容は、
上記のペルソナただ1人に向けて徹底的に磨き上げたのです。
原稿は、ペルソナにそのまま該当し実際に転職して社内で活躍している女性2名に
ヒアリングして作成し、その方々の写真も掲載しました。

■ 「誰でもウェルカム」は、誰にも届かない

結果はどうだったかというと、まさにこのペルソナ通りの素晴らしい方からの
応募があり、見事に採用成功へと繋がりました。

「誰でもウェルカム!」と書かれた求人は、求職者から見れば
「誰でもいい仕事(使い捨てにされるのでは?)」に見えてしまい、
結局スルーされてしまう場合もあります。

一方で、
「〇〇な経験があり、△△な働き方を望んでいるあなたに来てほしい」
と具体的に呼びかけると、その条件に合致した求職者は
「あ、これはまさに私のことだ!」
と強烈な当事者意識を感じて応募ボタンを押してくれるのです。

求人広告の営業担当者が、そこまで深く自社のビジネスや求める人物像を掘り
下げて提案してくれれば良いのですが、多忙な営業マンにそこまで期待するの
は難しいケースもあります。

だからこそ、会社自身が
「我が社はどんな人に来てほしいのか(Target)」
「自社が約束できる魅力は何か(Message)」
を明確にしておくことが大切です。

人事評価制度で自社の「求める人物像」や「行動指針」を言語化できている
会社は、採用においても強い軸を持っています。

もし今、採用が上手くいっていないと感じられている企業様は、一度自社の
「ターゲットの絞り込み」から見直してみてはいかがでしょうか。